秘
成田国際空港株式会社における空港施設等の整備事業に係る
入札・契約の実施状況等についての報告書(要旨)
平
成
1
8
年
1
0
月
検査の背景
成田国際空港株式会社(以下「成田会社」という。)は、成田国際空港株式会社法
(平成15年法律第124号)に基づき、平成16年4月1日、同法の規定により解散した新東
京国際空港公団(以下「空港公団」という。)の一切の権利及び義務を承継して、全額
政府出資の特殊会社として設立された。
成田会社では、空港の設置及び管理のために、滑走路、エプロン及び旅客ターミナル
ビル等の空港施設や航空灯火等の航空保安施設(以下、これらを「空港施設等」とい
う。)の整備事業を実施している。そして、旅客ターミナルビル等の各施設や航空灯火
等に電力を供給するなどのため必要となる受変電・配電設備、電源設備及び監視制御設
備を設置する工事(以下「受変電設備工事」という。)を多数発注している。
17年12月、空港公団が15年度に発注した受変電設備工事に関し、東京地方検察庁(以
下「地検」という。)は、当時発注等の業務に従事していた成田会社の社員2名を刑法
(明治40年法律第45号)第96条の3第1項の規定による競売入札妨害罪の容疑で逮捕した。
その後、地検は同月に、空港公団が15年7月に発注した「第1旅客ターミナルビル第5サ
テライト新築工事(受変電設備)」ほか2件の受変電設備工事の入札に関し、上記2名の
社員を競売入札妨害罪で東京地方裁判所に起訴した。
そして、18年3月に、上記2名に対し有罪判決が下され、刑が確定した。
上記の事態を踏まえ、成田会社では、17年12月に、従来、入札・契約方式の中心であ
った指名競争契約(以下「従来型指名競争契約」という。)を18年4月から廃止するな
どの契約方式の改善等を内容とする「工事発注事務の適正化策」(以下「適正化策」と
いう。)を策定し、公表した。
検査の着眼点、対象及び方法
空港公団及び成田会社が発注した空港施設等の整備に係る工事について、①入札・契
約事務が適切に行われているか、②工事の予定価格(成田会社においては契約制限価格。
以下同じ。)の積算が適切に行われているか、③この種事態の再発防止策が十分に執ら
れているかなどに着眼して検査を実施した。
表1 検査対象とした工事
検査は、成田会社本社の実地検査において工事の予定価格の算定状況や工事の発注状
況を調査するなどの方法により実施した。
検査の状況
( 1) 入札・契約事務の執行状況
空港公団及び成田会社において、13年度から17年度までの間に入札・契約した工事
の件数及び金額を、適用した入札・契約方式ごとに示すと、表2のとおりであり、成田
会社では、16年度から導入された公募型競争契約が、従来型指名競争契約に代わり、
多数を占めるようになってきている。
表2 入札・契約方式の適用状況
工事種別ごとの入札者数については、表3のとおりであり、建築、土木等工事と受変
(単位:件、千円) 件数 契約金額 件数 契約金額 件数 契約金額 契約金額1億円以上の
建築、土木等工事
205 133, 849, 977 92 51, 673, 436 297 185, 523, 414 契約金額1000万円以上の
受変電設備工事
14 3, 030, 825 9 4, 174, 485 23 7, 205, 310 計 219 136, 880, 802 101 55, 847, 921 320 192, 728, 724
成田会社 計 空港公団
( 13年度∼15年度) ( 16、17両年度) ( 13年度∼17年度)
表2- 1 契約金額1億円以上の建築、土木等工事 (単位:件、千円)
件数 契約金額 件数 契約金額 件数 契約金額
一般競争 12 50, 686, 524 - - 12 50, 686, 524
公募型指名競争 57 52, 045, 560 57 52, 045, 560
公募型競争 59 34, 816, 120 59 34, 816, 120
従来型指名競争 111 22, 733, 118 12 4, 706, 625 123 27, 439, 743
随意契約 25 8, 384, 775 21 12, 150, 690 46 20, 535, 465
計 205 133, 849, 977 92 51, 673, 436 297 185, 523, 414
計
( 16、17両年度) ( 13年度∼17年度)
成田会社
入札・契約方式
空港公団
( 13年度∼15年度)
表2- 2 契約金額1000万円以上の受変電設備工事 (単位:件、千円)
件数 契約金額 件数 契約金額 件数 契約金額
一般競争 - - -
-公募型指名競争 3 1, 608, 600 3 1, 608, 600
公募型競争 6 2, 058, 000 6 2, 058, 000
従来型指名競争 11 1, 422, 225 3 2, 116, 485 14 3, 538, 710
随意契約 - - -
-計 14 3, 030, 825 9 4, 174, 485 23 7, 205, 310
入札・契約方式
空港公団
( 16、17両年度)
成田会社 計
電設備工事とを比較すると、受変電設備工事における入札者数の平均は、建築、土木
等工事における入札者数の平均の7割程度となっていた。
さらに、これを建築、土木等工事のうち、受変電設備工事と同種の工事である電気
設備工事における入札者数の平均と比べると6割又は3割程度となっていた。
表3 入札者数等の実績
従来型指名競争で実施した受変電設備工事14件における指名業者数についてみると、
空港公団及び成田会社の規程では「なるべく10社以上を指名する」こととなっている
( 注1)
にもかかわらず、このうち13件については受変電機器製造会社である6社、1件につい
ては同6社のうちの5社が指名されていて入札者が限定的となっていた。このように入
札者が限定的となっているのは、「変圧器等の主要機器について自ら製作し、設置す
る工事を実施した実績があること」を競争参加の条件としていることによる。
すなわち、「変圧器等の主要機器について自ら製作」している会社は少数であるた
め、受注能力、受注意欲を持つ業者であったとしても、入札に参加できない状況とな
っていた。
( 注1) 受変電機器製造会社である6社 株式会社東芝、日新電機株式会社及び
富士電機システムズ株式会社(15年10月に富士電機株式会社の受変電
機器製造部門を承継)のほか3社
( 注2)
落札率の状況について、工事種別ごとにみると表4のとおりであり、その平均につい
てみると、空港公団発注工事では95. 7%、成田会社発注工事では95. 0%となっていた。
( 注2) 落札率 落札価格の予定価格に対する割合
表4 落札率の状況
(単位:件、%)
件数 平均落札率 件数 平均落札率
205 95. 6 92 94. 7
25 95. 8 16 95. 5
14 97. 1 9 98. 1
219 95. 7 101 95. 0
(注) 建築、土木等は、契約金額1億円以上、受変電設備は、契約金額1000万円以上
合 計 受変電設備
空港公団
工事種別
建築、土木等
上記のうち電気設備
( 13年度∼15年度)
成田会社
( 16、17両年度) (単位:件、者)
件数
入札者数の平
均値( 初回)
件数
入札者数の平
均値( 初回)
180 8. 1 71 8. 4
24 9. 8 10 20. 8
14 5. 9 9 5. 8
成田会社
( 16、17両年度)
(注) 建築、土木等は、契約金額1億円以上、受変電設備は、契約金額1000万円以上
受変電設備
上記のうち電気設備 建築、土木等
工事種別
また、落札率と入札者数の関係についてみると下図のとおりであり、建築、土木等
工事は「4∼6者」以上については、入札者数が多いほど落札率が95%以上の高率な工
事の割合が少なくなっている。一方、受変電設備工事については、入札者はすべて
「4∼6者」となっていて、落札率が95%以上のものが大半を占めている状況であった。
また、平均落札率も表4のとおり高率となっていた。
図 落札率と入札者数との関係
<建築、土木等工事> <受変電設備工事>
( 2) 受変電設備工事の予定価格の積算について
受変電設備工事を発注する場合の工事費の積算は、変圧器等の受変電機器の工場製
作費(以下「機器費」という。)及び機器の据付費・運搬費などの現場工事費を合算
して工事価格とし、これに消費税相当額を加えて積算価格を算定し、この金額を基に予
定価格を設定することとしている。
このうち、各工事における工事価格の約90%を占めている機器費の積算は、原則と
して、3社以上の機器製造会社に対して、見積書の提出を求め、合計額で最低の価格の
見積書を基に、機器ごとに値引額(値引率10%を基本とする)を控除の上、各機器の
価格を合算した価格を積算価格とすることとされている。
空港公団及び成田会社が実際に採用している値引率についてみると、機器の種類に
応じて10%から50%となっていた。
このように、値引率10%を大きく超えた値引率を採用していることについて、空港
公団及び成田会社は、設計コンサルタント等からヒアリングにより得た民間取引の実
勢価格を積算に反映させた結果であるとしているが、根拠資料はないとしていて、実
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
95%以上 16 46 56 66 90%以上95%未満 2 4 15 28 85%以上90%未満 1 1 1 0 80%以上85%未満 0 0 1 2 80%未満 3 4 3 2 合 計 22 55 76 98 1∼3者 4∼6者 7∼9者 10者∼
(単位:件)
(注) 随意契約46件を除く。
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
95%以上 0 22 0 0 90%以上95%未満 0 1 0 0 85%以上90%未満 0 0 0 0 80%以上85%未満 0 0 0 0 80%未満 0 0 0 0 合 計 0 23 0 0 1∼3者 4∼6者 7∼9者 10者∼
勢価格を反映した値引率となっているかについては確認できない状況であった。
( 3) 入札談合等に対する対応策について
国土交通省では、15年5月15日に、契約金額の10分の1に相当する額を違約金として
徴収する旨の違約金条項を制定し、同年6月1日以降に入札手続を開始する契約に適用
することとし、空港公団に対して、同年5月19日付けで「工事における違約金に関する
特約条項の制定等について」を参考通知している。その後、同省では、17年9月28日に、
違約金条項の強化を行い、これについても、成田会社に対し、同月30日付けで、「工
事における違約金特約条項の強化について」を参考通知している。
しかし、違約金条項の必要性についての認識が十分でなかったため、15年及び17年
に違約金条項についての参考通知があった際、空港公団及び成田会社では違約金条項
を契約書に明記する措置を執っていなかった。
前記の立件対象となった3件の工事のうち、15年11月及び12月に契約した2件につい
ては、同年6月1日以降に入札手続が行われていることから、同年5月の違約金条項の制
定についての参考通知に基づき、違約金条項を契約書に明記する措置を執っていれば
違約金を請求することが可能であったのにこの措置を執っていなかったため、違約金
を請求できない状況となっている。
また、国土交通省等においては、違約金条項を契約書に明記していない契約につい
ても、損害賠償の請求を行うこととしていることなどから、成田会社においては、立
件対象となった3件(契約金額計7億6576万余円)の工事については、損害賠償の請求
について検討することが必要である。
なお、成田会社では、前記の適正化策に基づき、18年1月から違約金条項を契約書に
明記する措置を講じている。
所見
成田会社は、16年4月に空港公団の一切の権利及び義務を承継して、全額政府出資の
特殊会社として設立され、早期に株式を上場し、完全民営化することを目標としている。
そして、効率的な企業活動を目指すとともに、「公正・透明な企業活動を通じて、健全
経営を目指す」ことを経営ビジョンの一つとして掲げているところであるが、前記のと
の確立を目的として適正化策を策定し公表しているものの、適正化策のうち、総合評価
方式の拡大や従来型指名競争契約の廃止など契約方式の改善については、18年4月から
実施されていて、契約金額1億円以上の工事件数についてみると5月末時点で10件程度で
あり、入札・契約の実績が少ないため、現時点では、その有効性等について検証するこ
とは困難な状況である。
上記のような状況を踏まえ、空港公団及び成田会社が発注した工事における入札・契
約事務の執行状況及び予定価格の積算について検査したところ、以下のような事態が見
受けられた。
① 受変電設備工事について「変圧器等の主要機器について自ら製作」することを競争
参加の条件としているため、入札者が限定的となっていた。
② 受変電設備工事の予定価格の積算で使用する見積りの値引率の根拠資料がなく、実
勢価格を反映した値引率となっているかについて確認できない状況であった。
③ 17年12月に適正化策を策定し、18年1月から実施するまで、違約金条項を契約書に
明記する措置を執っていなかった。
したがって、今後、成田会社において、適正化策を確実に実施すること、立件対象と
なった3件の工事については、損害賠償の請求について検討すること、契約事務等に係
る国の通知等に対しては適時適切に対応することはもとより、次のような処置を講じる
ことが望まれる。
ア 受変電設備工事の入札に当たっては、競争性を高めるため、「変圧器等の主要機器
について自ら製作」することの条件について見直しをするなどして、競争参加者の一
層の拡大に努めること
イ 予定価格の積算のうち、受変電設備工事における機器費の算定については、定期的
に物価調査会社等に価格調査を依頼するなどして、より実勢価格を反映できる積算方
法を検討すること
会計検査院としては、今後とも成田会社における適正化策の実施状況とその有効性等
について検査するとともに、上記事態についての成田会社の処置状況等について検査し